『流しのしたの骨』 * 江國 香織 | うたかたおもひ

『流しのしたの骨』 * 江國 香織

著者:江國 香織
タイトル:流しのしたの骨

久しぶりに読み返した、このお話。

もう、何度目だろう?

初めて手に取ったのは中学生の時だったでしょうか。

もう、遠い遠い昔のこと。


タイトルの持つ薄暗さとは裏腹

このやわらかさわやかな表紙。

ガーゼにやさしい色合いの刺繍。


そのギャップに惹かれて買ったのを

今もはっきりと覚えている。


お話は、なんてことのない。

両親、三女一男の6人家族のお話。

とりとめのない日常


主人公のことちゃんは19歳、

なんにもしていない。

社会的にみると家事手伝いというのだろうか。


日々を気ままに暮らしている。


そんなところを自分とシンクロさせながら読んでみたり。

買った当時はまさか自分がそうなろうとは、

まるで思ってもなかったのに。


でもあの当時、ことちゃんの気ままさ

ずいぶんと憧れたことは覚えている。

律のような小さな弟も欲しくなったし、

深町直人のような静かに笑う恋人も、

正方形のような折り目正しい家族のカタチにも、

まるまる全部憧れてた。


物語というのは、

時と共に内容が変わる。

正しくは内容そのものではなく

読み手であるわたしの

物語の捉え方が変わっているだけなのだが。


ことちゃんのような気ままさは手に入れたはずなのに、

いつでもシーソーみたいに、ぐらぐらなわたし。

深町直人もいなければ、

正方形の家族もない。


でも、それでいいんだ。


わたしはことちゃんじゃないんだから。


新緑のこの時期、

中学生の時のわたし

今のわたしはどう映ってるのかなー?なんて思いながら、

最後のページをめくった、今日の午後