『きいろいゾウ』 * 西 加奈子
- 著者:西 加奈子
- タイトル:きいろいゾウ
たまんない。
この作品は
とてもとても
たまらんかった。
たまらない、って使い分けることの出来る言葉。
disgusting・・・①の方と
feel so nice・・・②の方。
広辞苑の例文をここで紹介してみると、
「この暑さではたまらないな」・・・①
「湯上りにビールときてはたまらない」・・・②
さて、この本はどっちだ???
答えは、
わたしの中の答えは、
どっちもでした。
小説を読むと
作品世界に没頭すりゃいいのに
どこか自身のエピソードとくっつけたがる傾向がわたしにはあります。
そういった意味で
身につまされたりして、キリキリきて①のたまらなさ。
完全にわたしの主観ですが、
以前読んだ作者の「さくら 」もよかったのですが、
小説としてはこちらの方が断然おもしろかったのです。
話がスマートになっていて。
そういった小説としての
のびのびとした面白さに②のたまらなさ。
両方もちあわせているこのお話。
内容は説明しません。
そういう小説ではない気がしますので。
解るというよりかは感じる小説です。
人が自分から離れようとしているとき、
(物理的な距離ではなく、こころ)
その心理や感覚をすごく巧く捉えていて、
そこの描写でこころが痛くなった。
電車内で細々と泣いてしまいました。
泣くというよりは、
涙あふれてこぼれるといった感じ。
電車で泣くとひとりぼっち感が増して、
どうしょうもない気分になってしまいました。
哀しいときほど
泣けなかったり
つらいときほど
涙はでなかったり、
そういうことが自分と一緒すぎて、
この小説は怖いよーとすら思いました。
作品そのものもすごくよかったですが、
この物語を紡ぎだした西加奈子という人に
つよく興味を持ってしまいましたよ。
この人とは
どっかのうまい焼き鳥屋さんで
ビール飲みながら
わたしの人生のダメ出しをして欲しい・・・(笑)
なにかそういう対極さを感じてしまいました。
すごーく、いい小説でした。